カートをみる マイページへログイン ご利用案内 お問い合せ お客様の声 サイトマップ
RSS
 

悪場での身のこなし方

悪場での身のこなし方

■ 悪場での身のこなし方

 唐松岳(不帰ノ嶮)、剱岳(カニのタテバイ・ヨコバイ)、槍穂縦走(大キレット)、穂高岳(ジャンダルム)等、難所と呼ばれる登山コースの多くは、岩場や鎖場を通過します。
 悪場(あくば)とは岩場、鎖場、ハシゴ等が連続する岩稜帯のことで、クライミングで学んだ三点支持をしっかり行い、安全に通過しましょう。また、重心の移動、ホールドの持ち方、テスティング、落石・浮石への注意なども重要です。本ページでは、悪場で必要な基本的な技術や知識を学びます。

■ 三点支持

 三点支持の基本姿勢は、両手・両足の3点で確実にホールドやスタンスをとらえ、残りの1点を移動する重心の移動方法です。
 【三点支持でのクライミング】
 (A)安定した状態からスタート。
 (B)・(C)3点でバランスを取って残りの1点(片足ずつ)を移動させます。体重をのせる足の置き位置は自分の重心の中心の真下に持ってくると安定します。体重をしっかり載せることによって、靴底と岩との摩擦(フリクション)が大きくなり、滑りにくくなります。
 (D)両足が安定したら、1点(片手)ずつを移動させます。ホールドやスタンスがなければしかたがありませんが、両手・両足はできるだけ自分の肩幅くらいの幅の中で登ると楽に登れます。
 (E)鎖はバランスを取り、補助程度に考えましょう。鎖を引っ張って登ることはやめましょう。腕の力を使い力が無くなってしまったら、落ちる危険性があります。
三点支持での登り
【スタンスの置き方】
 (F)靴底を岩に押さえつける摩擦で止める「スメアリング」です。靴の性能によっても滑りやすさが異なるので、まずは自分の靴と岩の相性を安全な場所で確認しておきましょう。
 (G)岩の段差だと安定して重心移動ができます。
 (H)スタンスの置き場所がない場合は、片足を上げて重心を移動し乗り込んでいきます(ハイステップ)。このとき、上げた足にしっかり腰から体重を乗せて、滑らないように岩に押し付けます。
 (I)足の置く位置は重心の中心に足を置くと体重をしっかりかけることができて、安定して体重をのせれます。
 (J)靴底の泥は、できるだけ取りましょう。岩場で滑りやすくなるだけでなく、他のメンバーや登山者にも迷惑になります。
悪場でのスタンスの置き方
【ホールドの持ち方】
 (K)大きなホールドをしっかり持つ(ガバホールド)。
 (L)サイドに引いて保持する(サイドプル)。
 (M)体重をかけて壁を押し付ける(プッシュ)。立体的な岩場を登るときはこのプッシュを多用して、手にも体重を乗せてバランスを取ることが多いです。
 (N)手の甲でホールドと軽くたたいてテスティングし、木の根や鎖でバランスを取ります。
 (O)ルート全体を見回すため壁を体から離し、しっかり両足に体重をのせます。
ホールドの持ち方

■ 岩場の下降

 岩場の下降はルートやスタンスが確認しづらいので、登りよりも慎重にいきましょう。下降時に腰が引けて身体が斜面と平行になればなるほど斜面に対して滑りやすくなります。怖くても身体を垂直にすることに慣れていきましょう。
 (A)下降のルートをしっかり目で確認し、スタンスやホールドの位置を事前に確認します。
 (B)段差にスタンスを置き左足にしっかり体重をかけ、左手はプッシュします。
岩場での下降方法

■ 鎖場の考え方

 鎖場の通過は、鎖に全体重をかけて登るのではなく、バランスをとる補助程度に考えます。一つの鎖は他の人と共有しません。
 (A)基本的には岩で身体を支えます。
 (B)鎖を持つときはゆっくり体重をかけ、効いているかを確認する。
 (C)皮の手袋はすべりにくく岩や鎖から手を保護するのに有効です。
 (D)・(E)鎖で自己確保しながら進む場合は、アンカーを片手で保持して自己確保を入れ替えます。
鎖場の考え方や鎖場の通過方法

■ 落石(特に気をつける)

 落石は自分だけでなく他の人にも危険なので、ザレ場や浮石が多い場所では特に気をつけましょう。登り・平坦では、後ろ足を蹴りこまない。
 (A)浮石があるルートはなるべく避けて通る。しっかりルートファインディングして、最も踏まれているルートを選択しましょう。
 (B)誤って浮石に乗った場合は、そっと足を上げて落石を誘発しないようにします。
 (C)明らかに浮いている岩はテスティングしない。テストした瞬間に落石を引き起こすかもしれません。ルート上に大きな石が転がり落ちそうになっていた場合、他の登山者が落石を引き起こさないようにルートから移動させるのはOKです。
 (D)周りの安全を確認して手のひらでテスティングします。
 (E)落石を引き起こした場合は、「ラク!」と叫んでまわりに注意喚起します。
落石には気を付けましょう

登山のためのクライミング10原則

 初心者が陥りやすい間違いやポイントを、10個にまとめてみました。この10個だけではありませんが、まずはこれらの点に注意して練習、実戦してみてください。
Noポイント内容
1足のスタンスは つま先で部分で スタンスをつま先で乗ることによって、(1)小さいスタンスに立てるようになる、(2)重心移動を左右に動かしやすい、という利点があります。土踏まずや足裏全体で乗ると、楽ですが体の動きが制限される場合があります。
2鎖は補助 鎖に全体重をかけて登下降すると、(1)手が疲れ手の力が無くなったら滑落の危険性が高まる、(2)鎖で滑ったり・錆などのトゲで手を放す危険性がある、(3)鎖に降られバランスを崩しやすい。鎖は片手で補助程度に考えましょう。ただし、雨や下が滑りやすい状況だと、両手で鎖としっかりつかむ場合もあります。
3手を伸ばす クライミング中は極力手を伸ばしてバランスを取るように心がけましょう。手を伸ばすことによって、(1)無駄な力が抜け疲れにくい(前腕がパンプしにくい)、(2)行動範囲が広く・視野も大きくなり岩場全体が見える、(3)リラックスできます。よく動物園でサルが手を伸ばしてぶら下がっているのもこの原理です。
4足を先に動かす(気持ちで) 実際の岩場では、ついつい手のホールドだけ追いかけて手が先行しがちですが、手と足は一手・一歩ずつ確実に進みましょう。手を先に動かすと、(1)スタンスが無くなった場合、戻るのに非常に力(腕力)が必要な場合があり、(2)足の荷重が鉛直ではなく滑る方向に働きスリップする場合があります。
51歩1歩は小さく 足のスタンスは出来るだけ細かく切りましょう。登山技術でも同様のことが言えますが、(1)一歩が大きいとその分体力・筋力を使って疲れ、(2)体重移動を急激にするとバランスを崩しやすい。
6重心の真下に足を置く 足のスタンスに体重が乗れば乗るほど安定します。しっかり足に体重をかけて、靴底のフリクションを最大限に発揮しましょう。逆に手足が伸びきった状態だと、動きが制限されて視野も狭くなり、とても危険です。
7視野を広く クライミングに集中すると、(1)すぐ近くの手元・足元のみ確認しルート全体が見渡せなかったり、(2)すぐ近くのホールド・スタンスを見逃したり、(3)身体が狭まって緊張したりします。クライミングの練習をして余裕をもって挑戦しましょう。
8レスト レストは、(1)身体を休め緊張からリラックスし、(2)次の動作に移るためのルートファインディング、(3)水分補給・栄養補給のため重要です。
9ルートファインディング クライミングの基本は、岩場の弱点を攻めて楽に登ることです。ルート全体を見渡し、ホールド、スタンス、鎖、ペイント(印)を確認しましょう。
10靴ひもをしっかり締める 靴ひもをしっかり締めて靴と足がずれないようにしましょう。せっかくの良いフリクションのソールでも機能が半減します。特に足首を締めるとホールド感が良いです。


国内の難所・上級登山の紹介

 岩場、クサリ場、ハシゴ、雪渓など、登山道に様々な難所が出てくることがありますが、その中でも特に人気・ルートの面白さ・長さ・ロケーションの良さでいくつか選んでみました。

■ 妙義山各ルート

 表妙義の茨尾根を東の端から歩くコースは、体力とバランス感覚が要求される、上級者向けのコースです。岩登り、鎖場の通過などで、三点支持で確実に登るクライミングの基本動作が必要になります。ハイライトは、表妙義の稜線は急峻な岩稜帯をダイレクトに登り、危険な稜線を辿ります。奥の院から、鎖と急な岩場から始まります。垂壁に近い岩稜を2つ越え稜線に到着です。大のぞきを越え、30mのスベリ台状の岩場が出てきます。ここは状況によって、懸垂下降で下りましょう。

■ 槍穂高縦走、大キレット

 槍ヶ岳から北穂高岳の大キレットは山岳登山の様々な面において最高峰のルートです。登山技術、体力・筋力、クライミング技術やロープワークの知識と習得等、山岳登山に関する全ての経験・知識が高いレベルで要求されます。大キレットの核心は、鞍部を越えた長谷川ピーク(Hピーク)と、北穂高岳への岩場・鎖場の急登の飛騨泣きです。また、ルンゼ(沢)上の地形では浮石が多いので、落石を引き起こさないように十分気をつけましょう。
登山のためのクライミング10原則

■ 留意点

 上記では、悪場の通過方法の一例を示しています。岩稜帯や鎖場での行動は危険なスポーツなので、自己責任の範囲で経験豊かな指導者のもと行ってください。

このページに関連する商品ページのリンク

 悪場を安全に通過するため、フリクションの良い登山靴、クライミングシューズ、安全のためにハーネス・カラビナ・スリング等の登攀具を準備ておきましょう。また、これらの使い方や機能について十分練習・把握しておきましょう。

マムートハーネスマムートカラビナマムートスリング
カンプハーネスカンプカラビナカンプスリング

ページトップへ